島宿真里、「聞こえるかい、海の音」

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 松山からは電車で高松まで行くことになった。そしてフェリーで小豆島へ。当初は時間に余裕をみて、池田港行きのフェリーに乗ろうと思っていたが、ATMを探しているうちにフェリー乗り場へ来てしまい、草壁港行きのフェリーにまだ間に合うと言うので、そのまま乗ってしまった。船上から電話を入れると、真渡寛君が迎えに来てくれると言う。

 実は今回の一時帰国、高松へ行くことが大きな目的だった。と言うのも、昨年のH2O Vegetal試飲会(7月29日と30日)に、高松から6人のシェフがやって来て、和食の会を開いてくれた。そのご縁で、今度は彼らのお店を回ろうということになったわけ。ただ、その中の一人が実家の旅館の別館開業のために小豆島に戻っていた。最初は高松の後に寄ろうと思っていたが、週末は予約で一杯、全く空きがないと言う。そこでまず、小豆島の島宿真里へ行くことになった。でも一体、どういうところなのだろう?

 港に迎えに来てくれた寛君は、旅館のユニフォームの出で立ち。様になっている。早速宿へ案内してくれるが、見るからにシックな外観。館内に入ると、木調の新旧の調和が美し造りに見とれてしまう。しかも堅苦しさを全く感じない、暖かな雰囲気だ。そして部屋に通されて、ビックリ。「うわぁ、豪勢!広~い!」と思ったら、「こちらは一番小ぶりのお部屋ですが…」だって。唖然。

 私たちはヨーロッパを旅する際、食べ物(レストランなど)には(金の)糸目を付けないが、その分、ホテルはかなりはしょっている。宿泊施設付きのレストランは数少ないし、そもそも一晩限りの仮の居、それで十分だ。だから尚更、突然こんなところへ不時着すると、「いいの、こんなところへ泊まって?」となる。まぁ、なるようにしかならないが、でも、本当にいいのかな?

 夕食時、前もって予約した食堂のカウンター席へ案内される。その黒調ベースの落ち着いた空間で、カウンター越しに黒のサムイ姿のスタッフを見た時、謎が解けた気がした。ここはもしかして料亭旅館?それなら私、大好きなんだけど。とにかく、私が嫌いな旅館の作り置き料理ではなさそう。期待しちゃおう。

 結果は、大当たりだった。来る前の予想を遥かに超える素敵なお料理とおもてなし。本当に満足な一夜を過ごせた。死ぬまでに是非もう一度来訪れたい宿だ。そんな島宿真里は、元をたどると仕出し屋で、寛君のお婆ちゃんが始めた民宿らしい。それが洗練され大きくなって、もうじき別館「海音真里」ができる。そしてこちらを、いつも穏やかで優しい顔つきの寛君が仕切ることになる。さて、どんなご馳走を食べさせてくれるのか、乞うご期待!ただその前に、写真を撮るに際して、一つお願いしてみた。「寛君、ちょっとさ、ここだけでいいから、ガン垂れてみてよ!」はい、パチリ。

 寛君が連れて行ってくれた小豆島のヤマロク醤油。昔ながらの杉の木樽で醸造、その上その樽まで自分たちで作っている。話をしているうちに、寺田本家や発酵の里神崎とつながっていることが分かり、ちょっと盛り上がる。こうやって若い人たちがつながることは、本当に良いことだ。