寺田本家

Posted on

久しぶりの日本、久しぶりの超えた味

 約三週間ぶりの投稿。久しぶりに、本当に久しぶりに、日本へ行っていた。四年半ぶりの一時帰国。その間フランス(ヨーロッパ)とはずっと音信不通のまま、だからFBもブログもみんなお休みして、「十割日本」を楽しんだ。そもそも、家を出たらナヴィ(+日本では駅探)以外、基本的にモニター(スマートフォンやノートブック)なんて見たくない。だってもったいないもの。小さな画面には収まりきらない、目の前で起こっている面白い色々なできごとを見逃すなんて。そのために、自由でいたいんですよ、自由で。囚われの身にはなりたくない。まぁ、小さな世界に縛られるのも、その人の自由だけど。

 さて今回は、もう十年以上(?)乗っていなかったAF(エールフランス)で、パリ経由の成田着。個人的にはトルコ航空の方が好きだけど、AFがとにかく安かった。おまけに成田到着が朝。つまり、空港から直接寺田本家へ行ける。寺田優さんとは、毎年スペインやジョージアで再会していたけど、お蔵はやはり四年半ぶりの訪問だ。

 いつもの板間で、初めて醍醐の泡を飲む。「仕込んで日が浅いので、まだ泡が出ていかも…」との優さんの心配をよそに、僅かに発泡しだしたお酒がやけに美味しい。グイグイいけてしまい、「おう、よいよい、いけるよ、これ、優さん」と、駆けつけ四、五杯でようやく本題へ。「優さん、ところで例のもの、どうですか?」、「じゃぁ、やりますか」、「やりましょう、やりましょう」と表に出る。

 さて例のものとは、備前の大徳利に入れ地中に埋めて寝かした醍醐の雫のこと。もともとは、トリノで隔年に開催されるスローフッドのサローネ デル グスト2014年大会で、2002年以来続けてきた私たちの研修会の集大成のテーマ「かめ壺熟成」用に、優さんに頼んで14ヶ月熟成させてもらったものだ。これが滅茶美味しくて、是非同じものをと再び埋めてもらったが、結果的にその後私たちが一度も一時帰国することなく、そのままずっと地中で眠っていたものを、「掘り出そう」ということになったわけ。でも、自然はすごい。五年も放っておくと、「こんなにも根が張って…」と、優さんが四苦八苦しながら、なんとか掘り起こす。とりあえずかめ壺の表面の土を洗い流すと、口からほんのり香りが…。「これは、あっ、あれだ。」 

 栓をはずし注ぐと、褐色の液体が出てくる。「おう、おう、おう、よさそうじゃない、これ。」早速利き酒グラスで試してみると、「うわぁ、凄い、やっぱりあれだ!」「旨~い、ほのぼのまろやか紹興酒!」正に、自然派紹興酒、美味しい紹興酒。グイグイグイグイ、いけちゃう。今までに、達磨政宗など熟成古酒は色々飲んだことがあるけれど、こんなに飲みやすいものは生まれて初めてだ。「五年ビン熟成の醍醐の雫は飲んだことがあるけれど、かめ壺での熟成のしかたは全く違い、素晴らしい」とは優さんの弁。やはり自然(酒)は恐ろしい、元い、自然は凄い。そして、かめ壺は最高です。