粘土団子を知ってるかい?

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Alessandro Sgaravatti – Castello di Lispida

 皆さんは、福岡正信先生の名をご存知だろうか。不耕起、無肥料、無農薬、無除草の自然農法を提唱された方だ。また、ギリシャやスペインを初めタイ、ケニア、ソマリア等、世界十数カ国で、様々な種を混ぜ込んだ「粘土団子」での砂漠緑化を実践されたことでも知られ、海外では非常に高名だ。が、日本ではあまり知られていない。実は当初私たちも、イタリアの造り手から話を聞くまで、先生の名すら知らずにいた。仮にも「自然」を口にする「日本人」として恥ずべきことだと思う。

 残念なことに、私たちがお目にかかる機会を得る前に、2008年、95歳で亡くなられた。その福岡先生のことを最初に教えてくれたのが、カステッロ ディ リスピーダのアレッサンドゥロ スガラヴァッティだった。元々医学部の学生だった彼は、葡萄栽培醸造を始めるにあたり、福岡先生の哲学を学んだと言う。実際に来日して、福岡先生を訪ねている。 今思えば、私たちはとてももったいないことをしたと思う。当時私たちは何の準備もできておらず、馬鹿だった。なにも福岡先生のことだけではない。実はリスピーダの地下蔵には、その時すでにかめ壺が埋められていたのだ。でも当時は、それに興味すら示さなかった。かろうじて、スペイン製のティナッハで、確かヨスコ グラヴネールからもらった、と言っていたと思う。

 でも、その時の私たちときたら、「ヨスコって誰?」といった具合。ああ、恥ずかしや、恥ずかしや、壺があったら入りたい。結局、この程度の私たちだったから、(?)かめ壺ワインを試飲させてもらっていないと思う。まぁ、できの悪い奴には出さんというのも、仕方のないことか。もっともそのお陰で、私たちは後にクヴェヴリ グヴィノへ一目惚れ。ただならぬ思いを抱くことになった。これまた人生、楽しからずや。