フォトジェニック

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Denis Montanar – Borc Dodòn

 Triple Aの造り手の中で、アリアッナ オッキピンチと並んで出世頭と言ったら、ボルグ ドドンのデニス モンタナールかもしれない。当時から葡萄栽培(及び醸造)専門農家というよりも、葡萄以外に向日葵(油)等を作っていたが、今では小麦にトウモロコシ、大豆(なんと豆腐用!)等々、幅広い農作物を手がけている。

 そのデニス、初めて会った時は、スキンヘッドのせいか、滅茶苦茶強烈な印象だった。視線が突き刺すように鋭い。おまけに、動作はとてもスマートとは言い難い無骨さがある。それ故に、尚更人を圧倒する雰囲気だ。するとデニスが、何やら準備を始めた。どうやら、畑へ行くらしい。まず特製ベルトを腰に巻き、それに木の蔓を束ねたものをさし、剪定バサミを持って襟を正して準備完了。いざ出陣だ。デニス様のお通りだ。

 着いた畑は、緑の中に黄色のタンポポが眩しいほどに自生しているところ。記憶に間違いがなければ、確か当時の彼のラベルのデザインはタンポポだったはず。つまり、このタンポポは彼のご自慢だったわけだ。

 畑に入ると、すぐにデニスが上手に蔓で葡萄の枝を留め始めた。「それじゃぁ、撮らせてもらいましょうか」と体勢を低くするが、何か様にならない。右へ、左へと移ってみてもダメ。結局、「ええい、面倒だ!」とばかりに地べたにどっかり座り込んだ。そしたら急に、デニスの表情が変わった。まるでこちらの本気度が伝わったのか、真っ向から対抗してくるかのように、勢い良く作業を始めだした。その仕事の一瞬の合間の写真がこれ。自分でも結構気に入っていたのだけど…。

 実はこの写真が元で、しばらくの間デニスとの関係がギクシャクしてしまった。版権の問題だ。まぁ、よくある話だが、著作権と肖像権、及び使用権の関係が、一般には分かりづらいところがある。著作権は当然私たちに、肖像権はデニスでも、使用権はTriple Aの写真を依頼したVelierにある。それだけならさほど問題は起きないのだが、某輸入業者が勝手にこの写真を使ったせいで、ややこしいことになったのだ。

 もっとも今ではその時のしこりも取れ、再びデニスを撮影する機会に恵まれた。だけど、本当に嫌になる程、このデニスはフォトジェニック(写真映りがいい)なんですよね。スキンヘッドだから?眼光が鋭いから?堅物の動きだから?分からない。でも、「撮っていて飽きない奴」です。