Stefano Bellotti – Cascina Degli Ulivi
ステファノ ベロッティとは、もうゆうに十年以上の付き合いだった。Triple Aの造り手の中でも最初に撮影した一人だ。その時のこの「陸のポセイドン」のような彼の写真で、私たちの名がヨーロッパの自然派ワイン界で知られるようになった。ところであのイメージ、何処から降って湧いたのだろう。あの時目の前にいたステファノは、もっと土の香りがする野生児(?)で、それでいてどこかメルヘンチックな人だった。
まずは彼のボトルのラベル。愛娘が描いたというお気に入りのラベルは、まるで童話の幻想の世界で、彼の自然界に対する憧憬を、彼の生き方を写しだしていたのだろうか。彼が造ったワインは、いわばその夢の世界と現実を結ぶ架け橋だったのか。それに対し、後に出たVINOのラベルは、以前のものと比べ、ステファノの夢の投影には程遠い、背景にある販売戦略が見え見えの味気ないもだっだ。
昨年、ステファノの死を知った時、ショックというよりもそうだろうな、と思えた。年初めにバルセロナで会った時の彼の様体が、あまりにも芳しくなかったから。その後一度、ジェノヴァで再会した時には、少し持ち直したかのように見えたのだが…。ただ、「病院で膵臓癌と診断された。でも自然治療医が違うと言っている」と耳にして、これは危ないと思った。そしたら案の定、逝ってしまった。
ステファノが何を信じていたのか、私は知らない。何かあれば、今なら私も自然療法を選ぶだろう。ただよく分からない。去年一年で、ソリコ(アワ ワイン)、エルネスト(コスタディラ)、ステファノ(カシーナ デリ ウリヴィ)、アンリ(プリウレ・ロック)と、Triple Aの造り手が四人も亡くなっている。しかもみな五十代の若さだ。他にもVini Veriのベッペ(リナルディ)や、その前にはスタンコ(ラディコン)がいた。
何故、みな若くして死んだのか。分からない。自然派であることって、一体何なんだ。