林檎酢!!!

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Aci Urbajs

 スロベニア第三弾。今度は、イタリア国境から遠く離れて、反対側、オーストリア国境に近いアッチ ウルバイスを訪れた時だ。

 山道を登って行くと、高台に一軒家が見えてきた。脇で誰かが手を振っている。近付くと、「よく電話で道を尋ねずにここまで来たね」と、アッチが開口一番に英語で話しかけてきた。そりゃ、昔取った杵柄、WRC(世界ラリー選手権)の追っかけ取材をやっていたからね、人里離れた造り手を訪ねるなんてお安い御用。ただ問題は、あーっ、英語。私達は通常、英語を話す気が全くない。でも嬉しいことにアッチは、英語でもいいから話しをしたい、と思わせる人柄だった。

 そしてアッチの開口二番、「ちょっとお腹がすいたから、一緒に何か食べよう」と、樽から直出しのワイン(こんなことする人は、それまで見たことがなく、初めて!)を持ってくる。チーズをつまみながらそのワインを飲む。なかなかおつなものだ。大体、アッチのワインには真にアッチの香りがある。これこそ家付き酵母の成せる技、ですよね。

 そんなことを、使い慣れない英語で四苦八苦しながら話していると、アッチが突然、「リンゴ酢も造っているんだ」と言い出した。うへぇ、お酢かぁ。苦手だけど、ここは一丁「飲んでみようか」と試飲することに。「水で薄めて飲めば飲み易い」と言うアッチの声を尻目に、原酢をそのまま口にしたら、「あら、これ、美味しい!このままいける」とゴクンと飲んだその時、アッチの澄んだ瞳が輝いた。石灰をも溶かすお酢のお蔭で、「頭の中がショートした」元ハイテク青年との間合いが、一気に狭まった瞬間だった。

 ある日、コンピューター関係の仕事に従事していると、頭の中が真っ白になり、それで仕事を辞め、葡萄作りの世界に入ったそうだ。たった2ヘクタールだが、山の中にある斜面の畑は、全て自分一人で管理するという。小さな花が咲き乱れ、周りの木立から小鳥のさえずりが聞こえる、気持ちの良い畑を歩き回りながら、ビオディナミ用の材料を採取するアッチ。全てそこで補えると、ご自慢だ。そして、あの極美味のお酢の原料となる林檎が獲れる畑も、青々と美しい。金儲けのための葡萄専業者とは違い、地球を守る人がここにもいて、嬉しくなる。

 もう一つ、アッチに教えてもらった素敵なものがある。それは南瓜の種の油。あまりの美味しさに、フランスに戻って早々に、一瓶購入してみたが…、こちらはどうしてこんなに美味しくないのだろう…。分からない。ああ、スロベニアで買ってくればよかった。

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