チンピラソムリエ

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Bouchos du Montrachet D.R.C. – イメージは、直接テキストと関係ありません。

 ロマネ・コンティのことで、一度憤りを覚えた出来事がある。グラン ジュール ドゥ ブルゴーニュでのことだ。みなさんもたぶんご存知だろう。今でこそかなり形態が変わりつまらないものになったが、元々はブルゴーニュ中を移動しながら各村毎にご当地ワインを試飲して回ったスケールの大きな催しを。1998年、私たちはその存在すら知らずに、偶然開催時期にブルゴーニュへやってきていた。そこで知り合いのつてで、テロワール ドゥ コルトンに参加した。

 会場の一つアロックス・コルトンでは、村のあちこちにカヴォー(ドメンヌが場所を解放)が設けられ、訪問者が村を闊歩しながら試飲している。私たちも、まずコルトン・シャルルマーニュを求め、グラスを片手に村を回り始めた。そして二つ目のカヴォーを訪れた時のこと。雑誌で写真を見たことのあるボルドーで名を成す日本人ソムリエが、目の前を歩いていた。そこで、声をかけてみると、

「あれっ、何処かでお会いしましたっけ。」

「いえ、雑誌でお顔を拝見したことがあったので。すみません、お忙しいところ。それで、どうですか、試飲の方は。」

「あっ、そう。うん、まぁまぁだね。ところでさ、今、ロマネ・コンティに行って来たところなんだ。」

「あら、そうですか。それでどうでした?」

「色々試飲したけど、ロマネ・コンティは、まぁ、いいテーブル・ワイン、てとこだな。」

「(はぁ?)…。」

「ところで君たち、観光なの。」

「いえ、私たち、南仏に住んでいます。」

「(えっ、とビックリ)、そう…(まずい、と見え見え)。それじゃ…(もじもじ)、試飲を続けなければならないので。」

と、そのソムリエは慌てて逃げ出した。

 あーあ、みっともない。なんて貧相なの、あの後ろ姿、まるでチンピラじゃない。イキガって、馬鹿が、(同胞に)格好をつけて。そんな奴に限り、どうせフランス人にはへいこらしているくせに。ヨーロッパで最も嫌らしいタイプの日本人、名前も出したくない。でも、あんな奴に騙される(と言うか、そんな奴を崇める)日本人て、一体何なんだ。それに、ボルドー党って、あそこまで酷くなくとも、みんなあんな感じなのだろうか。