Emilio Rojo
ワイン生産者の中には、意外と脱サラ組、それも元IT(コンピューターや通信)関係の仕事に携わっていた人が多い。最近ではジョージアのジョン オクロやアルチル ナツヴリシュヴィリがそうだし、Triple Aの仕事を始めた頃にスペインの出逢った自然派かめ壺酸化防止剤無添加のラウレアノ セレス、スロヴェニアのアチ ウルバイスもそうだ。そして私たちが最初に出逢ったITからの転職者は、リベイロのエミリオ ロッホだった。
彼は元々、スペインの首都マドリッドで通信関係の仕事に就いていたが、故郷の葡萄の収穫を手伝ううちに、こちらが本業となった。そんな彼との待ち合わせは、何故か高速の出口。さて、何処へ行くのかしら?車で走り着いたのは山中のカフェだった。そこで常連たちに「オラ、ケ タル?(やあ、元気?)」と声をかけ、私たちを紹介。満足気にコーヒーを一気に飲み干すと、
「ティエネ ティエンポ、ヴェルダ?(時間、あるよな。)」
と、今度は今来た道を逆戻り。やがて畑に着くと、「マットレス持参で昼寝しながら」と夏の酷暑の中での葡萄栽培をとくとくと語り、
「ティエネ ティエンポ、ヴェルダ?それじゃ、一杯飲みに行こう。」
と、近くの街へ。観光ガイドさながらに街を闊歩し、行きつけのバールで一杯ひっかけ、
「ティエネ ティエンポ、ヴェルダ?うちのボデーガへ行こうか。」
と、ようやく醸造所に案内される。そこで早速、ボトルを一本開け試飲を始めるが、運悪く雨が降り出す。本降りになる前にとりあえず写真を一枚撮らさせてもらうと、今度は、
「ティエネ ティエンポ、ヴェルダ?何か旨いものを食べに行こう。」
そこは「飲み気」より三大欲の「食い気」、
「シ、シ。ヴァモス、ヴァモス(うん、行こう、行こう。」
と、車に飛び乗り向かったレストランは、地方色豊かな格別の味の店で、私たちは大満足。が、こと連れのブルーノ スカボ(日本で開催されたソムリエ選手権に登場したブルガリア代表のジュリアの未来の旦那様)は、
「これだけ時間をかけ、たった一本か…。」
と、不満気だ。長い付き合いの良い友達だけど、ソムリエってやはりこんなもの?
「ティエネ ティエンポ、ヴェルダ?」
「ソロ パラ ベベール(飲むための時間ならね)」だと、ちょっとつまらない。