フィリップとの出逢い

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もう一枚もっと好きなフィリップの写真があるけどソニアと一緒。だから出せなくて残念。

 写真展「ル モンラッシェ」は、新たな出逢いをプレゼントしてくれた。試飲会の半ば、二人の男が大慌てで飛び込んで来た。そして、

「テェリーの馬鹿野郎。どうせ時間通りに始まらんとか言うから、あっ、ボンジュール。」

と、ちょっとご機嫌斜めの様子。ドゥニ モルテだ。遅れを弟のせいにしているが、一緒にいるのは…?弟ではない。とりあえず、ドゥニの後ろに控えているが、はみ出している。「うん?この人、知ってる。会ったことないけど、あのチリチリ頭、体系、絶対に知ってる。でも、誰…」と思っていると、ドゥニが、

「あっ、これ、友達のフィリップ シャルロパン。よろしくね。行こう、フィリップ。ああ、もう、半分なくなってるじゃないか。まったく、ティエリーの奴…、ブツブツブツ。」

 トゥトゥン(フィリップの愛称)との出逢いは、想い出との再会にも似た、不思議な感覚だった。ずっと待ちわびていた人がヒョコっと目の前に現れたような、忘れていた縁が突然蘇ったような、どこかちょっと懐かしくて嬉しく、うまく行くような気がする、そんなワクワクするものだった。そして私たちは、後々色々とこのトゥトゥンの世話になることになる。ブルゴーニュのドン、アンリ ジャイエールに引き合わせてくれたのも彼だった。

 その時の話。アンリー爺さんがいきなりエシェゾーのボトルを開け、飲み会が始まった。

「フィリップ、お前とは何年になるんだ。初めてお前の家に行った時、お前のワインを飲んで『ダメだ、こんなの』と言ったら、お前のかみさんが偉い剣幕で食って掛かってきたんだよな。ああ、おっかねぇかみさんだ。それで、とにかく除梗しろと言ってやった。けど、その後どうした、フィリップ。」

「ああ、言われた通りにやったよ、師匠。」

「嘘つけ、全部やったのか。」

「いや、25%だけ。」

「だめだ、そんなの。全部やれと言ったろう。そしたらこいつ、次の年の収穫の時、また飛んできてな、除梗をした、した、した、と言いおる。それで、どれだけやったんだ?」

「50%。」

「全部だって言っとるのに。次の年もまたやった、やった、と言いにきて、それで?。」

「75%。」

「だめだ、全部、全部、全部。それで?」

「へへへ、結局四年かかったよ、師匠。」

「それで、全部やってどうなんだ。かみさんはまだ怒っているのか、ハハハ。」

 以後のシャルロパンのワインがどうかは、みなさんがご存知の通り。さて私たちはと言うと、最後に行き着いた先は全房派だ!